法人口座の名義変更 代表者変更や死亡時に必要な手続きや書類とは

会社の代表者が変わったり、社名が変更になったりした際に必要となる法人口座の名義変更。「どのような手続きが必要なのか」「どんな書類を準備すればよいのか」など、分からないことが多いのではないでしょうか。この記事では、法人口座の名義変更について、必要な手続きから書類、費用、注意点まで分かりやすく解説します。
法人口座の名義変更とは
法人口座の名義変更とは、会社の基本的な情報に変更があった際に、銀行に届け出ている口座情報を新しい内容に変更する手続きのことです。
法人口座の名義には、通常以下のような情報が含まれています。
- 会社名(商号)
- 代表者名
- 本店所在地
これらの情報に変更があった場合、速やかに銀行への届出が必要となります。
法人口座の名義変更が必要なケース
法人口座の名義変更が必要となる主なケースは以下の通りです。
代表者が変更になった場合
会社の代表取締役が交代した場合、法人口座に登録されている代表者名の変更が必要です。これは最も一般的な名義変更のケースといえます。
会社名(商号)が変更になった場合
会社の名前が変わった場合も、法人口座の名義変更が必要です。株式会社から合同会社への組織変更なども含まれます。
本店所在地が変更になった場合
会社の本店所在地が変更になった場合、銀行に届け出ている住所情報の変更が必要です。
代表者が死亡した場合
代表者が亡くなった場合、新しい代表者への変更手続きが必要となります。この場合は特別な手続きが必要になることがあります。
法人口座の名義変更は、商業登記の変更手続きを先に完了させてから銀行手続きを行う必要があります。登記変更が完了していない状態では、銀行での手続きを進めることができません。
法人口座の名義変更に必要な書類
法人口座の名義変更手続きには、以下の書類が必要となります。
基本的な必要書類
書類名 | 取得場所 | 備考 |
---|---|---|
履歴事項全部証明書 | 法務局 | 発行日から6ヶ月以内の原本 |
印鑑証明書 | 法務局 | 発行日から6ヶ月以内の原本 |
法人口座の通帳・証書 | – | 現在使用中のもの |
届出印 | – | 銀行に届け出ている印鑑 |
代表者の本人確認書類 | – | 運転免許証、マイナンバーカード等 |
代表者変更の場合の追加書類
代表者が変更になった場合、上記の基本書類に加えて以下の書類が必要になることがあります。
- 新代表者の印鑑証明書(発行日から6ヶ月以内の原本)
- 代表者変更届(銀行指定の書式)
- 株主総会議事録の写し
法人口座の名義変更手続きの流れ
法人口座の名義変更は、以下のような流れで進めます。
- 商業登記の変更手続きを行う
- 履歴事項全部証明書等の取得
- 銀行への連絡
- 必要書類の準備
- 銀行窓口での手続き
- 手続き完了の確認
①商業登記の変更手続きを行う
まず法務局で商業登記の変更手続きを完了させます。この手続きは株主総会での決議から2週間以内に行う必要があります。
②履歴事項全部証明書等の取得
登記変更が完了したら、履歴事項全部証明書や印鑑証明書などの必要書類を取得します。
③銀行への連絡
取引銀行に名義変更手続きを行いたい旨を連絡し、必要書類や手続き方法を確認します。
④必要書類の準備
銀行から指定された書類を準備し、記入漏れがないかチェックします。
⑤銀行窓口での手続き
準備した書類を持参し、銀行窓口で手続きを行います。
⑥手続き完了の確認
新しい通帳やキャッシュカードの発行を受け、手続きが完了したことを確認します。
複数の銀行で法人口座を持っている場合は、各銀行で個別に手続きが必要です。効率的に進めるため、必要書類を多めに取得しておくことをおすすめします。
代表者死亡時の特別な手続き
代表者が亡くなった場合、通常の名義変更とは異なる手続きが必要になります。
法人口座は凍結されるのか
個人の銀行口座は名義人が亡くなると凍結されますが、法人口座は代表者が亡くなっても通常は凍結されません。これは、法人と個人が法律上別の存在として扱われるためです。
代表者死亡時の手続きの流れ
新代表者の選任
株主総会等で新しい代表者を選任します。
代表者変更の登記
法務局で代表者変更の登記手続きを行います。
銀行への届出
新代表者の情報を銀行に届け出ます。
代表者死亡時の必要書類
代表者が亡くなった場合の手続きには、通常の書類に加えて以下が必要になることがあります。
- 死亡診断書または死亡届の写し
- 新代表者選任に関する株主総会議事録
- 相続関係を証明する書類(戸籍謄本等)
法人口座の名義変更にかかる費用と期限
手続きにかかる費用
法人口座の名義変更に直接かかる銀行手数料は、多くの場合無料です。ただし、事前に必要な登記手続きには費用がかかります。
手続き内容 | 登録免許税 | 備考 |
---|---|---|
役員変更登記 | 1万円または3万円 | 資本金1億円以下の場合は1万円 |
商号変更登記 | 3万円 | – |
本店移転登記 | 3万円または6万円 | 管轄外移転の場合は6万円 |
手続きの期限
商業登記の変更は、株主総会での決議から2週間以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。
銀行での名義変更手続きには法定期限はありませんが、登記変更後は速やかに行うことが重要です。
法人口座の名義変更で注意すべきポイント
手続きを怠るリスク
名義変更手続きを行わないと、以下のようなリスクがあります。
- 取引先から不審に思われる可能性
- 契約書類の照合で問題が生じる可能性
- 金融機関からの信用に影響する可能性
- 自動引き落としが停止される可能性
書類の有効期限に注意
履歴事項全部証明書や印鑑証明書は、発行日から6ヶ月以内のものが必要です。手続きが遅れると書類を取り直す必要があるため、計画的に進めることが大切です。
複数口座がある場合の対応
複数の銀行で法人口座を持っている場合、それぞれの銀行で個別に手続きが必要です。手続き漏れがないよう、リストを作成して管理することをおすすめします。
法人口座の名義変更は、法務手続きと銀行手続きの両方が必要な複雑な手続きです。不明な点がある場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
法人口座の名義変更は、代表者変更や社名変更、本店移転などの際に必要となる重要な手続きです。手続きを適切に行うためには、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
- 商業登記の変更を先に完了させる
- 必要書類を正確に準備する
- 法定期限内に手続きを完了させる
- 複数の銀行がある場合は個別に手続きを行う
- 不明な点は専門家に相談する
特に代表者が亡くなった場合は、通常の手続きとは異なる対応が必要になるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
適切な手続きを行うことで、会社の信用を維持し、スムーズな事業運営を継続することができます。法人口座の名義変更が必要になった際は、この記事を参考にして計画的に手続きを進めてください。