法人口座における投信の源泉徴収額はどうなる?

法人が投資信託を保有する際、法人口座における源泉徴収の仕組みは個人投資家とは大きく異なります。この記事では、法人の投資信託運用における税務処理、源泉徴収の税率、口座の種類による違いなどを、初心者の方にも分かりやすく解説いたします。
法人口座における投資信託の源泉徴収制度
源泉徴収制度の基本的な仕組み
法人が投資信託から受け取る収益には、源泉徴収制度が適用されます。この制度により、投資信託会社や証券会社が支払い時に一定の税額を差し引き、国に納付します。
法人の場合、源泉徴収された所得税等は法人税から控除することができるため、最終的な税負担が軽減される場合があります。
対象となる収益の種類
法人口座における投資信託で源泉徴収の対象となる収益は以下の通りです。
- 普通分配金
- 換金時の譲渡益(解約請求の場合)
- 投資信託の償還による収益
一方で、買取請求による譲渡所得については源泉徴収されません。これは、買取請求が譲渡所得にあたるためです。
源泉徴収税率の詳細
現在の源泉徴収税率
2025年現在、法人が投資信託から受け取る分配金等に対する源泉徴収税率は以下の通りです。
税目 | 税率 |
---|---|
所得税 | 15% |
復興特別所得税 | 0.315% |
合計 | 15.315% |
平成25年1月1日から、所得税の源泉徴収税率により計算した源泉徴収税額に2.1%を乗じて計算した金額が復興特別所得税として、源泉徴収税額とあわせて徴収されます。
出典:SBI証券FAQ
復興特別所得税の期間
復興特別所得税は2037年12月31日までの期間に適用される税目です。この期間中は、通常の所得税に加えて復興特別所得税0.315%が源泉徴収されます。
法人口座の種類と源泉徴収の関係
一般口座と特定口座の違い
法人も個人と同様に、証券会社で口座を開設する際に口座の種類を選択できます。
口座の種類 | 年間取引報告書 | 確定申告 | 源泉徴収 |
---|---|---|---|
一般口座 | 自分で作成 | 必要 | 分配金のみ |
特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が作成 | 必要 | 分配金のみ |
特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が作成 | 原則不要 | 分配金・譲渡益とも |
法人における特定口座の特徴
法人の場合、個人とは異なり、特定口座(源泉徴収あり)を選択しても確定申告が必要になることがほとんどです。これは、法人税の計算において源泉徴収された所得税等を控除する必要があるためです。
法人は投資活動以外にも事業所得があるため、投資信託の損益も含めて総合的に税務処理を行う必要があります。
源泉徴収された税額の取り扱い
所得税額控除制度
法人が投資信託から受け取る分配金等について源泉徴収された所得税等は、法人税から控除することができます。これを「所得税額控除」と呼びます。
- 源泉徴収された所得税等の全額が控除対象となる
- 法人税額より控除額が多い場合は還付される
- 確定申告書別表6(1)に明細を記載する必要がある
所有期間対応分の計算
一部の投資信託については、元本の所有期間に対応する部分のみが所得税額控除の対象となる場合があります。
- 公募株式投資信託の収益分配
- 集団投資信託の収益分配
- 国外投資信託の配当等
この場合、原則的な方法と簡便法のいずれかを選択して計算を行います。
実務上の注意点
確定申告における処理
法人が投資信託を保有している場合、以下の点に注意して税務処理を行う必要があります。
項目 | 処理方法 |
---|---|
受取配当金 | 益金算入(受取配当等の益金不算入の適用検討) |
源泉徴収税額 | 法人税から控除(別表6(1)に記載) |
譲渡損益 | 有価証券売買損益として計上 |
受取配当等の益金不算入
法人が受け取る投資信託の分配金のうち、株式投資信託の元本部分については受取配当等の益金不算入の適用を検討することができます。ただし、債券投資信託については適用されません。
受取配当等の益金不算入を適用する場合は、投資信託の運用実態や分配金の性質を十分に検討する必要があります。
よくある質問と回答
Q1. 法人口座でも個人と同じ税率で源泉徴収されるのですか?
A1. はい、源泉徴収税率は個人と同じ15.315%です。ただし、法人の場合は確定申告で法人税から控除できるため、最終的な税負担は異なります。
Q2. 特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要ですか?
A2. 法人の場合、原則として確定申告が必要です。投資信託以外の事業所得もあるため、総合的な税務処理が必要になります。
Q3. 源泉徴収された税額が還付されることはありますか?
A3. はい、源泉徴収税額が法人税額を上回る場合は還付を受けることができます。この場合、確定申告書の提出が必要です。
まとめ
法人口座における投資信託の源泉徴収について、重要なポイントをまとめると以下の通りです。
- 源泉徴収税率は所得税15%+復興特別所得税0.315%の合計15.315%
- 解約請求は配当所得として源泉徴収されるが、買取請求は源泉徴収されない
- 源泉徴収された税額は法人税から控除でき、控除しきれない場合は還付される
- 法人は口座の種類に関わらず、原則として確定申告が必要
- 受取配当等の益金不算入の適用可否を検討する必要がある
法人口座における投資信託の税務処理は複雑な部分もありますが、適切に処理することで税負担を最適化することができます。不明な点がある場合は、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。