法人口座における投信の源泉徴収額はどうなる?
法人が投資信託を保有するとき、分配金や売却益にかかる源泉徴収の仕組みは個人投資家とは異なります。法人の場合、源泉徴収された税額を法人税から差し引けるなど、独自の税務処理が必要です。この記事では、法人口座での投資信託にかかる源泉徴収の税率・対象・税額の取り扱いを解説します。
法人口座の投資信託にかかる源泉徴収の仕組み
源泉徴収の基本
法人が投資信託から受け取る収益には源泉徴収が適用されます。投資信託会社や証券会社が支払い時に一定の税額を差し引き、国に納付する仕組みです。
法人の場合、源泉徴収された所得税等は法人税から控除できます。そのため、源泉徴収で一度引かれても、最終的な税負担として二重に課税されるわけではありません。
源泉徴収の対象になる収益
法人口座の投資信託で源泉徴収の対象となる主な収益は以下のとおりです。
- 普通分配金
- 解約請求による収益(解約時の収益分配にあたる部分)
- 投資信託の償還による収益
一方で、買取請求による譲渡益は源泉徴収の対象になりません。買取請求は譲渡所得として扱われるためです。同じ「換金」でも、解約請求と買取請求で源泉徴収の扱いが分かれる点に注意が必要です。
源泉徴収の税率はいくらか?
現在の源泉徴収税率
法人が投資信託の分配金等で源泉徴収される税率は、所得税15%と復興特別所得税の合計です。
| 税目 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税(所得税額×2.1%) | 0.315% |
| 合計 | 15.315% |
出典:国税庁「復興特別所得税の源泉徴収」
口座の種類で源泉徴収はどう変わるか?
一般口座と特定口座の違い
法人も証券口座を開設する際に口座の種類を選択できます。ただし、法人の税務処理は個人とは異なります。
| 口座の種類 | 年間取引報告書 | 法人の確定申告 |
|---|---|---|
| 一般口座 | 自分で作成 | 必要 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が作成 | 必要 |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が作成 | 必要 |
個人は「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶと確定申告を省略できる場合がありますが、法人にこの仕組みはありません。法人は事業所得などと合算して法人税を計算するため、口座の種類にかかわらず法人税の申告が必要です。
源泉徴収された税額はどう扱うか?
所得税額控除で法人税から差し引ける
法人が分配金等で源泉徴収された所得税等は、法人税から控除できます。これを「所得税額控除」といいます。
- 源泉徴収された所得税等を法人税額から控除できる
- 法人税額より控除額が多い場合は、差額が還付される
- 確定申告書の別表六(一)に明細を記載する必要がある
所有期間に応じた計算が必要な場合がある
公募株式投資信託の収益分配などについては、元本の所有期間に対応する部分のみが所得税額控除の対象になる場合があります。この計算には原則法と簡便法があり、いずれかを選択します。
実務上の注意点
確定申告での処理
法人が投資信託を保有している場合、決算・申告では次のように処理します。
| 項目 | 処理方法 |
|---|---|
| 受取分配金 | 益金算入(受取配当等の益金不算入の適用を検討) |
| 源泉徴収税額 | 法人税から控除(別表六(一)に記載) |
| 譲渡損益 | 有価証券売買損益として計上 |
受取配当等の益金不算入の検討
法人が受け取る投資信託の分配金のうち、株式投資信託の一定部分については「受取配当等の益金不算入」の適用を検討できる場合があります。ただし、公社債投資信託など対象外のものもあり、適用範囲は投資信託の種類によって異なります。
受取配当等の益金不算入の適用範囲は、投資信託の運用内容や分配金の性質によって細かく定められています。自己判断せず、税理士に確認してください。
法人口座の投信源泉徴収でよくある質問
法人でも個人と同じ税率で源泉徴収されますか?
分配金等に対する所得税の源泉徴収税率は個人と同じ15.315%です。ただし法人は地方税分が源泉徴収されず、源泉徴収された所得税を法人税から控除できるため、最終的な税負担の計算は個人と異なります。
特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要ですか?
法人の場合は口座の種類にかかわらず法人税の申告が必要です。投資信託以外の事業所得と合算して計算するため、源泉徴収ありの特定口座を選んでも申告は省略できません。
源泉徴収された税額が還付されることはありますか?
源泉徴収された所得税額が法人税額を上回る場合、差額の還付を受けられます。この場合も確定申告書の提出が必要です。
まとめ
法人口座での投資信託にかかる源泉徴収のポイントを整理します。
- 分配金等の源泉徴収税率は所得税15%+復興特別所得税0.315%=15.315%(法人は地方税分なし)
- 解約請求は源泉徴収の対象、買取請求(譲渡益)は対象外
- 源泉徴収された所得税は法人税から控除でき、控除しきれない分は還付される
- 法人は口座の種類を問わず法人税の申告が必要
- 受取配当等の益金不算入の適用可否は投資信託の種類ごとに検討する
法人の投資信託の税務処理は複雑です。適切に処理すれば税負担を最適化できますが、判断に迷う場合は税理士に相談してください。
次は法人の投資信託におすすめの証券口座を確認する
税務処理を理解したら、次は実際にどの証券口座で運用するかが問題になります。法人の投資信託に向いた口座とその選び方を、以下の記事でまとめています。
法人投資信託のためのおすすめ口座3選とその選び方
法人で投資信託を運用するならどの口座が向いているか。おすすめの証券口座と選び方のポイントを解説します。
本記事の税率・制度は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。税制は改正される場合があります。実際の税務処理は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

