法人口座開設が難しいと言われる5つの理由

会社を設立したので法人口座を開設しようと思ったのに、銀行から断られてしまった。そんな経験はありませんか?実は、法人口座の開設は個人口座と比べて難しいのが現実です。
これには、マネーロンダリング対策の強化や、銀行側の厳しい審査基準など、複数の理由があります。
本記事では、法人口座開設が難しいと言われる具体的な理由と、審査を通過するための実践的な対策方法について、中学生でも理解できるよう分かりやすく解説します。
法人口座開設の現状と審査の厳しさ
法人口座の開設は、実際にどの程度難しいのでしょうか。実際に法人口座の申込をした企業の調査結果によると、申し込んだ銀行のうち約半数で審査に落ちているという状況が明らかになっています。
個人口座と比較して、法人口座の審査通過率は大幅に低くなっています。特に設立したばかりの会社では、メガバンクでの口座開設は困難を極めることが多く、複数の金融機関に申し込まざるを得ない状況となっています。
このように法人口座開設が困難になっている背景には、金融機関側の事情と法的規制の強化が大きく影響しています。
法人口座開設が難しい5つの主要な理由
法人口座開設が難しい理由は主に以下の5つに分類されます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
理由1:マネーロンダリング対策の強化
最も大きな理由として、マネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化が挙げられます。近年、振り込め詐欺やフィッシング詐欺などの金融犯罪が横行しており、これらの犯罪に法人口座が悪用されるケースが増加しています。
マネーロンダリングとは、犯罪によって得た資金の送金を転々と繰り返し、出所や所有者を分からなくする行為です。法人口座は個人口座よりも多額の資金を扱えるため、犯罪者に狙われやすいのが現状です。
このような状況を受けて、金融機関では犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づいた厳格な審査を実施しています。FATF(金融活動作業部会)などの国際的な規制強化の影響もあり、銀行の審査基準はより厳しくなっています。
理由2:事業実態の不透明さ
設立したばかりの会社では、事業実態が不透明であることが審査落ちの大きな要因となります。銀行側としては、「本当に事業を行っているのか」「架空の会社ではないか」という点を慎重に判断する必要があります。
審査で重視される項目 | 具体的な確認内容 |
---|---|
事業の実績 | 取引先との契約書、請求書、納品書など |
事業所の実在性 | 登記住所での実際の事業活動 |
将来性の見込み | 事業計画書、市場分析資料など |
特に、バーチャルオフィスを利用している場合や、登記住所と実際の事業場所が異なる場合は、事業実態の証明が困難になり、審査に不利となります。
理由3:資本金の少なさ
現在の法律では1円から会社設立が可能ですが、資本金が少ないと「事業を行う意思がない」「すぐに廃業する可能性が高い」と判断されがちです。
- 資本金50万円未満:審査通過が困難
- 資本金50万円~100万円:銀行によって判断が分かれる
- 資本金100万円以上:比較的審査に通りやすい
ただし、資本金の額だけでなく、事業内容や代表者の経歴なども総合的に判断されるため、資本金が少なくても他の要素で補うことは可能です。
理由4:事業内容や目的の不明確さ
定款や申込書に記載された事業内容が不明確だったり、事業目的が20~30種類も記載されている場合は、「何を本業とするのか分からない」として審査に不利となります。
将来的な事業展開を見据えて多くの事業目的を記載したくなりますが、審査では逆効果になることがあります。メインの事業に関連する5~10程度に絞り込むことが推奨されています。
理由5:代表者の信用問題
法人口座の審査では、法人だけでなく代表者個人の信用情報も重要な判断材料となります。以下のような場合は審査通過が困難になります。
- 過去に金融事故(自己破産、債務整理など)を起こしている
- 代表者の経歴と事業内容に関連性がない
- 反社会的勢力との関わりが疑われる
- 個人の信用情報に問題がある
法人口座開設の審査を通過するための対策
これらの理由を踏まえて、法人口座開設の審査を通過するための具体的な対策をご紹介します。
対策1:事業実態を証明する書類の準備
事業実態を明確に示すため、以下の書類を準備しましょう。
- 詳細な事業計画書
- 取引先との契約書や発注書
- 商品・サービスのパンフレットやカタログ
- 会社案内や企業ホームページ
- 営業許可証や資格証明書(必要な業種の場合)
対策2:適切な金融機関の選択
すべての金融機関が同じ審査基準ではありません。創業間もない企業に理解のある金融機関を選ぶことが重要です。
金融機関の種類 | 審査の特徴 | おすすめ度 |
---|---|---|
メガバンク | 審査が厳格、実績重視 | ★☆☆ |
地方銀行 | 地域密着、比較的柔軟 | ★★☆ |
信用金庫 | 小規模企業に理解がある | ★★★ |
ネット銀行 | 手続きが簡便、審査が柔軟 | ★★★ |
対策3:必要書類の完璧な準備
書類の不備は審査落ちの直接的な原因となります。以下の書類は確実に準備しましょう。
- 法人の印鑑証明書(発行から6か月以内)
- 履歴事項全部証明書(発行から6か月以内)
- 定款のコピー
- 代表者の本人確認書類
- 法人設立届出書の控え
- 事業内容がわかる資料
対策4:複数の金融機関への同時申込
審査に落ちるリスクを考慮し、複数の金融機関に同時に申し込むことも有効な戦略です。ただし、あまりに多くの金融機関に申し込むと、かえって印象が悪くなる可能性があるため、3~4行程度に留めることが推奨されます。
法人口座を開設できない場合の対処法
それでも法人口座を開設できない場合は、以下の対処法を検討してみましょう。
専門家への相談
税理士や行政書士などの専門家に相談することで、審査通過のためのアドバイスを得られます。特に法人設立に詳しい税理士は、金融機関との関係性があることも多く、口座開設をサポートしてくれる場合があります。
事業実績を積んでからの再申込
一度審査に落ちても、事業実績を積んでから再度申し込むことは可能です。個人口座で事業を行い、取引実績を作ってから法人口座開設に再チャレンジするという方法もあります。
法人口座の審査は厳しくなっていますが、適切な準備と対策を行えば開設は可能です。重要なのは、事業の真正性を証明し、金融機関に安心感を与えることです。
出典:GMOあおぞらネット銀行
まとめ:法人口座開設成功のために
法人口座の開設が難しい理由は、マネーロンダリング対策の強化、事業実態の証明困難さ、代表者の信用問題など複数の要因が絡み合っています。しかし、これらの理由を理解し、適切な対策を講じることで、審査通過の可能性を大幅に高めることができます。
- 事業実態を明確に証明できる書類の準備
- 自社の状況に適した金融機関の選択
- 必要書類の完璧な準備と提出
- 事業内容の明確化と将来性のアピール
- 必要に応じた専門家のサポート活用
法人口座は事業運営において重要な役割を果たします。最初は困難に感じるかもしれませんが、しっかりとした準備と適切なアプローチにより、必ず開設できるはずです。諦めずに取り組んでいきましょう。